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クマ出没の背景は?

青森県のリンゴ畑や奈良県で高齢の女性がクマに襲われる事件や、北海道でヒグマが市街地に出没し、新聞配達員が死亡するなど、深刻な被害の報道が続いています。

このようにクマによる人間への危害が増加している背景には何があるのでしょうか?

1, 食糧不足と自然環境の変化
クマの主食であるブナやミズナラのドングリなど堅果類が凶作になる年は、クマが山中の食糧不足から人里に降りてくる傾向があります。
特に2023年度はドングリの大凶作が影響し、クマが食べ物を求めて住宅地や農地に侵入するケースが増加しました。気候変動による猛暑や暖冬も、草や果実の生育に影響を与え、クマの行動範囲を人里に広げています。

2.生息地の縮小と里山の変化
 戦後のスギやヒノキの植林による森林の単純化や、ナラ枯れによる広葉樹の減少が、クマの餌場を減らしています。また、過疎化や高齢化による耕作放棄地の増加、放置された果樹園や生ごみがクマを引き寄せる要因となっています。里山の荒廃によりクマと人間の生活圏の境界が曖昧になり、「アーバンベア」と呼ばれる市街地に出没するクマが増加しています。

3.クマの個体数の増加と行動変化
 保護政策の進展により、ツキノワグマやヒグマの個体数が回復傾向にあり、特に東北地方では生息域が拡大しています。さらに、人里での食料入手を学習した「新世代クマ」が増加し、人を恐れずに住宅地や市街地に出没するケースが問題となっています。これにより、従来の山中での遭遇だけでなく、住宅地や市街地での人身被害が増えています。

4.人間活動の影響
 観光客による餌付けや、不適切なごみ管理が、クマを人里に引き寄せる要因となっています。

5.気候変動の影響
 温暖化による冬眠期間の短縮や、猛暑による山の食料資源の枯渇が、クマの行動パターンを変えています。特に今年の猛暑は山中の食料を減らし、クマが人里に降りる頻度を高めていると指摘されています。